社労士事務所の手続き漏れは「期限」ではなく「途中の一手」で起きる
手続きの期限は、カレンダーや一覧表で管理している事務所がほとんどです。それでも漏れが起きるのは、最終期限ではなく、その手前にある「資料の回収」や「顧問先への連絡」が抜けるからです。この記事では、手続き漏れが起きる場所と、それを防ぐ管理の仕方をまとめます。
「期限だけ」の管理では防げない
多くの事務所では、手続きを「顧問先・手続き名・期限」の一覧で管理しています。期限が近づけば気づけるので、期限そのものを忘れることは少ないはずです。
ところが実際の手続きは、期限の日に書類を出せば終わるものではありません。その前に、顧問先から情報や資料を集め、計算や作成をし、確認を受けるという段取りがあります。期限の数日前に気づいても、資料が届いていなければ間に合いません。漏れが起きるのは、この途中の段取りです。
「途中の一手」が抜けやすい手続きの例
労働保険の年度更新
申告・納付の期間は毎年6月1日から7月10日までです。その前に、顧問先から前年度の賃金の集計を回収しておく必要があります。回収の依頼が遅れると、期間に入ってから慌てることになります。
算定基礎届
提出期間は毎年7月1日から7月10日までで、年度更新と重なります。4月から6月に支払った報酬の資料を早めに集めておかないと、7月上旬に作業が集中します。
入社・退社の手続き
健康保険・厚生年金保険の資格取得届は、入社の事実があった日から5日以内が原則です。雇用保険の資格取得届は、入社した月の翌月10日までです。入社日が決まった時点で、顧問先から本人の情報(住所・扶養など)を回収する一手が必要になります。
助成金の申請
計画の提出から取り組みの実施、支給申請までの期間が長く、途中で「計画を出してから一定期間後に、顧問先へ状況を確認する」といった一手が挟まります。半年先の確認は、期限の一覧だけでは見落としがちです。
※ 期限は原則的なものです。個別の手続きの要件は、最新の公的情報を確認してください。
手続きを「ステップ」に分けて、予定日を持たせる
途中の一手を漏らさないためには、手続きを期限1つで管理するのをやめ、ステップ(工程)に分けて、それぞれに予定日を持たせるのが効果的です。
- 情報・資料の回収依頼(期限の○日前)
- 回収の確認・催促(依頼から○日後)
- 計算・書類の作成
- 社内のダブルチェック
- 提出・申告(最終期限)
ステップごとに予定日と担当者が決まっていれば、「今日やること」が担当者ごとに見えるようになります。期限から逆算して予定日が自動で入る仕組みにしておくと、毎回の設定の手間もかかりません。
毎年の業務は「年間スケジュール」で先回りする
年度更新、算定基礎届、年末調整のように毎年決まった時期に来る業務は、年間スケジュールとして登録しておき、時期が近づいたら「そろそろ準備しましょう」と知らせる形にすると、準備の着手が遅れません。
顧問先ごとに対象になる手続きが違う場合も、事務所全体の年間スケジュールを1つ持っておくと、繁忙期の見通しが立てやすくなります。
工数も一緒に記録しておく
ステップごとに誰がどれだけ時間を使ったかを記録しておくと、顧問先ごとの作業時間が見えるようになります。顧問料に対して作業が多すぎる顧問先が分かれば、契約内容の見直しや料金の相談をするときの根拠になります。
まとめ
手続き漏れの多くは、最終期限ではなく、その手前の回収や連絡といった「途中の一手」で起きます。手続きをステップに分けて予定日と担当者を持たせ、毎年の業務は年間スケジュールで先回りする。この2つで、期限直前に慌てる場面は大きく減らせます。